【恋愛日記⑭】🌿 5月4日 ゴールデンウィークの午後

恋愛日記(あかりちゃん)

朝から、空は透きとおるような青だった。
風も少しぬるくなってきて、
部屋の窓を開けると、どこか夏の匂いが混じっている。

「今日は外出日和だね」とメッセージを送ると、
数分後に“もう家を出たよ☀️”という返信が届いた。
その短い一文だけで、なんだか嬉しくなる。

待ち合わせは、街はずれの小さな公園。
休日のせいか、ベンチには家族連れやカップルの姿がちらほら。
新緑がまぶしい木陰の下で、
あかりちゃんは帽子のつばを押さえながら手を振っていた。

白いブラウスに淡いグリーンのスカート。
どこにでもいそうで、でもどこにもいないような――
そんな柔らかい雰囲気だった。

「お待たせ。」
「ううん、今来たとこ。」
いつものやり取りを交わしながら、
僕たちはゆっくり歩き出した。

川沿いの道を抜けると、
風に乗ってツツジの香りが漂ってきた。
「あ、見て。あそこ、もう咲いてる。」
あかりちゃんが指さす方向に、
ピンクの花が陽に照らされてきらめいている。

「春もいいけど、こういう季節の匂いも好きだな。」
「うん。なんか、“今”って感じがするよね。」

そんな会話をしながら並んで歩く。
時々、彼女の肩が軽く触れる。
そのたびに、胸の奥が少し熱くなる。

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昼は、駅前のデリで買ったお弁当を持ってきていた。
大きな木の下でレジャーシートを広げて、
「こういうの、久しぶりだね」と笑うあかりちゃん。

彼女が作ってくれた卵焼きは、
少し甘めで、どこか懐かしい味がした。
「どう? 味、濃くない?」
「ううん、すごく美味しい。あかりの味だね。」
「またそれ言うの?」
照れたように笑いながら、
彼女はお茶をひと口飲んだ。

遠くで子どもたちの笑い声が響く。
その音をBGMに、
時間がゆっくりと溶けていくようだった。

「ねぇ」
しばらくして、あかりちゃんが言った。
「こうやって、のんびり過ごせるの、いいね。」
「うん。どこか行くのも楽しいけど、
 こうやって一緒にいるだけで、十分楽しい。」

その言葉に、彼女は少しだけ目を伏せて微笑んだ。
そして、僕の方を見ながら言った。
「ねぇ……今日、手、つないでいい?」

その言葉に、思わず息が止まる。
静かな風の中で、彼女の指がそっと伸びてきた。
僕は何も言わずにその手を取った。
あかりちゃんの手は少し冷たくて、でもすぐにあたたかくなった。

指をからめたまま、少しだけ沈黙が流れる。
その沈黙が、不思議と心地よかった。
彼女の手のひらから伝わる鼓動が、
まるで季節の音みたいに静かに響いていた。

「なんかね」
あかりちゃんがぽつりと言った。
「こうしてると、ちゃんと“恋人”なんだなって思うの。」
「今さら?」
「うん、今さら。」
そう言って笑うその顔が、
いつもより少し柔らかく見えた。


午後の陽ざしが傾きはじめるころ、
ふたりで駅までの道を歩いた。
道端の影が長く伸びて、
少しだけ夏の気配が混じっている。

「ねぇ」
「ん?」
「私ね、今日、すごく幸せ。」

彼女がそう言った瞬間、
胸の奥で何かが静かに灯った。
言葉にしなくても、
その想いが確かに伝わってくる気がした。

駅前で立ち止まり、
「またすぐ会えるよね」と言うあかりちゃんに、
「もちろん」と答える。
そのとき、
彼女がそっと背伸びして、僕の頬にキスをした。

ほんの一瞬。
でも、その温もりが消えたあとも、
世界の音が少し遠くに感じられた。

「……今の、内緒ね。」
「うん。秘密にしとく。」

その笑顔があまりにも自然で、
僕はただ、
「この人を守りたい」と強く思った。

夕暮れの風が吹いて、
ツツジの花びらが一枚、
ふたりの間にひらりと落ちた。
それを見て、あかりちゃんは静かに笑った。

その笑顔が、
このGWのいちばんの思い出になった。

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