【恋愛日記⑳】🎄 12月24日 あかりちゃんと過ごすクリスマス・イブ

恋愛日記(あかりちゃん)

朝から街がにぎやかだった。
ガラス越しに流れるキャロル、
ショーウィンドウに並ぶ赤と金の飾り。
空気は冷たく澄んでいて、
吐く息が小さな白い雲みたいに流れていく。

今日は、あかりちゃんと過ごす初めてのクリスマス・イブ。
それだけで、
この冬が特別なものになる気がしていた。


待ち合わせは夕方、
あかりちゃんの部屋の近くのカフェ。

ガラス越しに彼女の姿を見つけたとき、
胸の奥がふっと温かくなった。

「おまたせ。」
「ううん、今来たとこ。」

ふわりと香るシャンプーの匂い。
白いコートの下から、
去年より少し大人っぽいワンピースがのぞいていた。

「似合ってるね。」
「ありがと。……でもちょっと寒いかも。」
そう言って僕の腕に軽く手を添えた。
そのしぐさが、やわらかくて愛しかった。

カフェを出てからは、
並んで歩くだけで嬉しかった。
イルミネーションが灯る通りを抜け、
少し遠回りをして帰る。
夜風が頬に触れるたび、
あかりちゃんが僕の腕に寄り添ってきた。

「ねぇ。」
「うん?」
「こうやって歩くの、去年は想像もしてなかったね。」
「ほんとだね。」
「不思議だよね。お客さんとエステティシャンだったのに。」
「気づいたら、隣にいた。」
「うん……。それがすごく自然で、嬉しい。」

その言葉を聞いて、
僕はあかりちゃんの手をそっと握った。

指先が少し冷たくて、
でもその冷たさごと愛しいと思った。


部屋に戻ると、
小さなツリーに灯りがともっていた。
飾り付けはあかりちゃんの手作りだ。
紙のオーナメントに、小さな星、そしてキャンドル。

「かわいいね。」
「でしょ? 去年より上手にできたの。」
「ほんと器用だね。」
「ふふ、仕事柄ね。」

テーブルの上には、
チキンとサラダ、それにケーキ。
「お店のケーキもいいけど、
 今日は手作りしてみたかったの。」
あかりちゃんは照れたように笑って、
小さなフォークを手渡してくれた。

「ねぇ、こうして一緒に過ごすの、
 本当に幸せだね。」

そう言いながら、
僕たちはゆっくり食事を楽しんだ。
外では風が強くなって、
窓をかすかに揺らしている。

でも、
その音さえも遠く感じるほど、
部屋の中は静かであたたかかった。


食後、ツリーの下でプレゼントを交換した。

僕が渡したのは、
小さな革のフォトフレーム。
中には、ふたりで撮った初めての写真を入れてある。
あかりちゃんが笑顔で、僕は少し照れている写真だ。

「これ、好きな写真だ。」
「うん。俺も。」

あかりちゃんはしばらく見つめてから、
そっとフレームを胸に抱いた。

「ありがとう。……宝物にする。」

そして、
彼女が差し出した包みを開けると、
中には一冊の小さなノートが入っていた。

表紙には、
手書きの文字で「ふたりの記録」と書かれていた。

ページを開くと、
出会った日から今日までの小さな出来事が、
丁寧な字で綴られていた。

――初めて来てくれた日。
 笑った顔が優しくて、ちょっと気になった。

――二人でイルミネーションを見た日。
 手をつなぐのが、うれしくて少し怖かった。

――これからの季節も、一緒にいたい。

ページをめくるたびに、
胸の奥がじんわりと熱くなった。

「……これ、全部あかりちゃんが?」
「うん。少しずつ書いてたの。
 いつか、ちゃんと渡したいと思って。」

僕はノートをそっと閉じて、
彼女の手を包み込んだ。

「ありがとう。
 こんなに大切に思ってもらえてるって、
 本当に嬉しい。」

あかりちゃんは目を伏せて、
少しだけ震える声で言った。

「ねぇ。
 これからも、ずっと一緒にいようね。」

「うん。約束する。」

彼女がそっと顔を上げたとき、
キャンドルの灯りが瞳に映っていた。

「ねぇ、もう一つお願いしてもいい?」
「なんでも。」
「次のクリスマスも、その次の冬も……
 手をつないで、一緒に見たい。」

「もちろん。」
「ほんと?」
「うん。
 十年先でも、きっと同じように笑ってたい。」

その言葉に、
あかりちゃんはゆっくり頷いた。
そして、僕の胸に顔をうずめた。

「……大好き。」

その声が、
クリスマスの鐘の音よりも深く響いた。

外では雪が降り始めていた。
窓の外、白い粒がゆっくり舞い降りて、
街を静かに包み込んでいく。

その光景を眺めながら、
僕はあかりちゃんの肩を抱き寄せた。

――この人と、
 これからの冬も、春も、夏も、秋も、
 すべてを分かち合いたい。

その願いが、
言葉を超えて胸の奥で確かな誓いになった。


夜が更けて、
ツリーの灯りだけが静かに瞬いている。

「来年の冬も、一緒にケーキ作ろうね。」
「うん、約束だよ。」

指先に光るおそろいのブレスレットが、
小さく、確かに輝いた。

――
それはまるで、
永遠を約束する小さな星のようだった。

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