〈2日目:海と空をめいっぱい味わう、ふたりだけのリゾートの一日〉
朝、カーテン越しに差し込む白い光にゆっくりと目を覚ました。普段よりも少しだけ遅い朝。隣を見ると、あかりちゃんがすやすやと眠っていた。
薄い掛け布団から覗く肩、静かな寝息、時々ふにゃっと口元が緩む癖――その全部が、“旅先で迎える朝”という特別さを強く感じさせた。
しばらく眺めていると、あかりちゃんがまぶしそうにまばたきをして目を開けた。
「…おはよう。なんか、すごい幸せな朝だね」
寝起きの声はまだ少し掠れていて、それが妙に可愛かった。
ふたりでバルコニーへ出ると、眩しいほどの青と風の匂いが一気に押し寄せてきた。まるで沖縄が「今日も楽しんでいってね」と言ってくれているみたいだった。
海は昨日よりもいっそう透明で、太陽に照らされてキラキラと光っていた。
「…これ、本当に来たんだね」
「うん。夢みたいだな」
軽く朝食を済ませて、着替えを整えたあと、ふたりでビーチへ向かった。
足元の砂がさらさらと崩れ、海風に髪が揺れる。
あかりちゃんはワンピースの上にカーディガンを羽織って、日差しを避けながらも嬉しそうに歩いていた。
「今日、なにしたい?」
「泳ぎたいけど……あなたと砂浜歩くのもしたいし…写真も撮りたいし…」
と、迷いに迷っている顔が子どもみたいで微笑ましい。
結局、ひとまずビーチチェアに座ってのんびり海を眺めることにした。
波の音と風だけが聞こえて、時間の流れがゆっくりになったようだった。
「ねぇ」
隣で、あかりちゃんがそっと手を重ねてきた。
「こういうの…すごく幸せだね」
「うん。俺も、ずっとこうしてたい」
言うと、彼女は照れて目をそらしたけれど、つないだ指先はきゅっと力をこめていた。
海に足を入れると、水は思ったよりぬるくて、その優しい温度が足首から心までしみ込んでくるようだった。
「わぁ…気持ちいい…」
波が寄せるたび、あかりちゃんの笑顔が弾ける。その表情を見るだけで、旅に来た意味がすべて満たされていく気がした。
しばらく海で遊んだあと、マリンアクティビティに挑戦した。
バナナボートでは、ふたりでしがみつきながら「落ちるー!」と大騒ぎして、終わった後は笑いすぎて膝が震えるほどだった。
シュノーケリングでは、海の中の世界が想像以上にきれいで、あかりちゃんは夢中で魚を指差していた。
水面から顔を出して、マスクを外した瞬間、あかりちゃんは
「ねぇ…一緒に見れてよかった」
と静かに笑った。
その一言がやさしく胸に響いた。
昼食はビーチ近くのカフェで、タコライスとマンゴージュースを頼んだ。
あかりちゃんは、食べるたびに「おいしい…!」と目を輝かせる。
その笑顔を見るだけで、こちらまでお腹が満たされていくようだった。
午後はホテルのプールでゆっくり過ごした。
浮き輪に乗ってぷかぷか漂うあかりちゃんが、まるで太陽に愛されているみたいに明るく見えて、写真を撮ってほしいとお願いされると、思わずシャッターを切りすぎてしまうほどだった。
夕暮れ時、海岸線に沈む夕日を見に行った。
空がオレンジから紫へと変わっていく瞬間、あかりちゃんが静かに肩を寄せてきた。
「…ねぇ、今日ね」
「ん?」
「あなたとこうしていると、“夫婦なんだなぁ”って…すごく実感わくんだ」
その声はどこか甘くて、少し照れていて、心の奥にしみていく。
「これからも、いろんな景色、一緒に見れるのかな…」
「見れるよ。全部一緒に見ていこう」
そう言うと、あかりちゃんは胸の前で小さく手をぎゅっと握った。
その横顔が夕日に照らされて、言葉にできないほど綺麗だった。
夜はリゾート内のレストランで少し贅沢なディナー。
ワインを少し飲んで頬を赤くしたあかりちゃんが、帰り道で腕にそっと抱きついてきた。
「…ねぇ、今日すごく楽しかったよ」
「俺も。最高の一日だった」
「明日もさ…いっぱい思い出作ろうね」
「もちろん」
部屋に戻り、シャワーを浴びてベッドに並んで横になると、今日の余韻が体じゅうにまだ残っていた。
あかりちゃんは眠りに落ちる直前、
「…あなたと来れて、ほんとによかった…」
と、小さな声でつぶやいた。
その言葉が、今日の最後の贈り物みたいに心に残った。

