【恋愛日記⑪】🌸 3月25日 春の小旅行の前日

恋愛日記(あかりちゃん)

カーテンの隙間から、春の光が差し込んでいた。
窓の外では、桜の蕾がほころび始めている。
少しずつ街の空気が柔らかくなっていくのを感じながら、
僕はぼんやりと週末の天気予報を見ていた。

“明日は晴れ。最高気温17度。絶好の行楽日和です。”

ニュースキャスターのその一言に、
胸の奥がふわりと弾む。
そうだ、明日は――あかりちゃんと行く、小さな春の旅行の日。

きっかけは、ほんの何気ない会話だった。
「もうすぐ桜、咲くね。」
「うん。今年はどこか見に行けたらいいな。」
「じゃあ、行こうか。」
たったそれだけのやりとりが、
この数週間を穏やかに照らしていた。

夕方、仕事を終えて帰る途中、
駅前のスーパーでお菓子や飲みものを買い込む。
彼女の好きなミルクティーと、小さなパウンドケーキ。
あかりちゃんは甘いものを食べると、
いつもほんの少しだけ幸せそうな顔をする。

帰宅してカバンに詰めながら、
「これは必要かな、いや、こっちも…」と
つい独りごとが増えていく。
こんなに念入りに荷造りしたのは、
たぶん学生時代の修学旅行以来だ。

夜になって、
「明日の準備、できた?」とLINEを送ると、
すぐに既読がついた。
“うん! 服も決めた! おやつも準備完了✨”
そのテンションの高さが文字から伝わってきて、
思わず笑ってしまう。

“楽しみすぎて寝られなさそう”
“寝なきゃダメだよ。明日、寝坊したら置いていくぞ”
“それは困る! じゃあ頑張って寝る😴”

そんなやりとりをしているうちに、
気づけば時計の針は11時を回っていた。
画面を閉じて、枕元の灯りを落とす。
部屋が静かになって、
窓の外からはかすかに春の風の音が聞こえる。

目を閉じても、
あかりちゃんの笑顔が頭の中に浮かんでくる。
たぶん彼女も、同じように明日のことを考えているだろう。
まだ旅に出てもいないのに、
すでに心の中では始まっていた。


翌朝の天気を確認しようと、
ふとスマホを手に取ると、
新しいメッセージが届いていた。

“ねぇ、明日、いっぱい写真撮ろうね。”
その一言に、胸がきゅっと締めつけられた。
どんな景色よりも、
きっと僕はその笑顔を撮りたいと思うだろう。

明日は、春の風の中で――
ほんの少し、あかりちゃんとの距離が
また近づく気がしていた。

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