その日は、少し冷たい風が吹いていた。
仕事帰りの電車の窓に映る自分の顔は、どこか疲れていたけれど、
“家に帰ればあかりちゃんがいる”
その事実ひとつで、心はすぐに軽くなった。
玄関の扉を開けると、いつものようにキッチンの明かりがこぼれている。
ただ、どこか空気が静かだった。
信頼と実績の洗える布団ブランド【Araemax】(アラエマックス)
「ただいまー」
と声をかけると、キッチンからあかりちゃんが顔を出した。
エプロン姿で、いつもの笑顔……なのに、少しだけ緊張したような表情。
「お、おかえり……!」
声がわずかに震えていた。
「どうしたの? なんかあった?」
僕がそう尋ねると、あかりちゃんは一瞬迷うように唇を噛み、
両手をぎゅっと胸の前で握りしめた。
「ねぇ……ちょっと、座ってくれる?」
リビングに入ると、テーブルには湯気の立つスープが並んでいて、
その横に、見慣れない小さな紙袋が置いてあった。
僕が椅子に腰かけると、
あかりちゃんは僕の正面に座り、深呼吸をひとつして、静かに言った。
「えっとね……今日……病院に行ってきたの」
胸が少しざわつく。
「具合悪かったの?」
「ううん……そうじゃなくて……」
言葉が続かない。
まるで何かを大切に抱えているみたいな沈黙。
あかりちゃんは視線を落としたまま、両手を膝の上でそっと握りしめていた。
そして、ほんの小さな声で言った。
「……赤ちゃん、いたよ」
時間が止まったようだった。
「……え……? 今……なんて……?」
「赤ちゃん……できてた……。あのね……ちゃんと、いたの」
顔を上げたあかりちゃんの目は、涙を必死にこらえていた。
不安と喜びが入り混じったような、あの夜にしか見られない表情だった。
僕の胸の奥で、何かが大きく揺れた。
息を吸うのを忘れるほどの衝撃と、
体があたたかくなるような幸福が、一度に溢れた。
「……ほんとに?」
「うん……ほんと……だよ……」
その瞬間、彼女の目からぽろぽろ涙がこぼれた。
僕は椅子から立ち上がり、
あかりちゃんをそっと抱きしめた。
彼女もすがるように僕の服を握り返してくる。
「よかった……ほんとに……あなたになんて言おうって……ずっと悩んでて……」
「どうして悩むの」
「だって……嬉しいけど……やっぱり急だし……迷惑じゃないかなって……」
その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
僕は彼女の背中を優しく撫でながら、
ゆっくりと言葉を落とした。
信頼と実績の洗える布団ブランド【Araemax】(アラエマックス)
「迷惑なわけない。
あかりちゃん……ありがとう。
僕との子どもを……迎えてくれて、ありがとう」
あかりちゃんは声にならない声で泣きながら、僕に顔を埋めた。
「……あなたが、パパになるんだよ?」
「うん……あかりちゃんが、ママになるんだね」
「不思議だね……でも……ね、すごく幸せなんだ」
抱きしめていると、
彼女の小さな震えや温かさが、胸に静かに流れ込んでくる。
この瞬間だけで、人生がひとつ前に進んだ気がした。
しばらくして、涙が落ち着くと、
あかりちゃんは照れたように笑って言った。
「赤ちゃん……きっと、あなたみたいに優しい子だよ」
「いや、あかりちゃんみたいに明るくて可愛い子だよ」
「ふふ……どっちでも嬉しいね」
二人で顔を見合わせて、そっと手を重ねた。
まるで、
新しい未来に向かって扉が開いたような夜だった。
この先、きっと不安もある。
だけど――
ふたりなら大丈夫だと、心から思えた。
そしてその夜、
“夫婦”だったふたりは
そっと“家族”へと歩き始めた。

