家族の未来を語り合ったあの夜、
どこか胸のなかがふわふわして、なかなか眠れなかった。
あかりちゃんは僕の腕の中で、安心したように静かな寝息を立てていて、
その温もりを感じるたびに、昨晩の言葉が蘇ってきた。
――“あなたとなら、どんな未来でも大丈夫だよ”
その言葉が、眠りの入り口に立つ僕の心を何度も優しく撫でた。
朝、まだ薄い光がカーテンの隙間から差し込み、部屋が少しずつ色づき始めたころ。
ふと目を覚ますと、あかりちゃんはまだ僕の胸の上で眠っていた。
頬がほんのり赤くて、寝癖が少しだけ跳ねていて、
それがどうしようもなく愛おしかった。
そっと髪を撫でると、彼女のまつ毛がかすかに震えた。
やがてゆっくりと目を開け、まだ夢の中にいるみたいな声で僕を呼んだ。
「……おはよう……」
「おはよう、あかりちゃん」
目が合う瞬間、昨夜の話の続きを思い出したらしく、
あかりちゃんはぱっと顔を赤くして、胸元にきゅっと顔をうずめた。
「……昨日のこと、夢じゃないよね?」
「夢じゃないよ。全部ほんと」
「ふふ……そっか……」
小さく笑ったあと、彼女は照れくさそうに僕の指をつまんで遊び始めた。
無意識に癖のようにやる仕草だけど、
今朝はどこか、前より深くつながっている感じがして胸が温かくなる。
「ねぇ……なんかさ……今朝はいつもより幸せだね」
「うん、僕もそんな気がする」
「昨日話せてよかった……。
言ったあと、ちょっとドキドキしたけど……あなたが喜んでくれたから、安心した」
僕はそっと彼女の頬を撫でた。
あかりちゃんは目を細めて、猫みたいに気持ちよさそうに身じろぎした。
「ねぇ……もし、いつか本当に家族ができたらさ……
朝って、もっと早く起こされちゃうのかな?」
「きっとそうだね」
「ふふ……あなた、起こされても優しくしてあげてね?」
「あかりちゃんがいてくれたら、どんな朝でも幸せだよ」
「……もう、そういうこと言う……」
照れ隠しに枕を軽く僕に押しつけながら、
でもその表情は嬉しさを隠しきれていなかった。
しばらく、ふたりで布団の中に包まれながら話した。
これからのこと、未来のこと、まだ形のない家族のこと。
どれも答えを急がなくていい話ばかりで、
ただ“ふたりで考える”という事実が温かかった。
「あのね……」
あかりちゃんが最後に小さく言った。
「今日からまた、ひとつひとつ……未来に向けて一緒にいこうね」
その言葉に、胸の奥のほうがふっと明るくなった。
僕は軽く頷いて、あかりちゃんに優しいキスをする。
「もちろん。あかりちゃんと一緒なら、どんな未来でも楽しみだよ」
カーテンの隙間から差す朝の光が、ふたりの部屋をやさしい色に染めていた。
家族の話をした翌朝は、
いつもより少しだけ暖かくて、
いつもより少しだけ未来が近くなった気がした。

