週末の朝、窓から差し込む光がやわらかく部屋を満たしていた。
気温は少し低く、秋の深まりを告げるような澄んだ空気が漂っている。
今日は、ふたりがずっと楽しみにしていた日。
赤ちゃんの無事と健やかな成長を願うため、安産祈願へ向かう約束をしていた。
「あ、起きた?」
寝室のドアをそっと開けたあかりちゃんが、少し嬉しそうに微笑む。
お腹は以前よりもふっくらしていて、その丸みは彼女の動作ひとつひとつを優しく見せていた。
「うん。なんだか今日は早く目が覚めた」
「私も……ずっと楽しみでね。なんか、気合い入ってるかも」
そう言って手をお腹にあて、照れたように笑う。
身支度を整えて、ふたりで家を出る。
澄んだ空気の中を歩いていると、まるで祝福するように風がひらりと頬を撫でた。
「ねえ、なんかいい朝だね」
「うん。こういう日にお参りできるのって嬉しいね」
「赤ちゃんも嬉しいのかな……」
「絶対嬉しいよ。たぶん、今ごろ聞いてる」
「ふふ、聞いてくれてるといいな」
そんな会話をしながら、神社へ向かった。
シャイニージェル公式ショップ■ 神社の静けさと、祈りの時間
鳥居の前に着くと、背筋が自然と伸びた。
赤い鳥居をくぐる瞬間、あかりちゃんはお腹をそっと撫でる。
「なんだか……守られてる感じがするね」
「うん、この空気、すごく落ち着く」
境内は人が少なく、木々のざわめきだけが心地よい音を奏でていた。
授与所で受付を済ませ、待っている間、ふたりで手を繋いで静かに座る。
あかりちゃんは、お腹を見つめながら小さくつぶやいた。
「ここまで来れたこと、すごくありがたいね」
「本当にね。こうしてふたりで来られるのが一番嬉しい」
「……あなたと一緒だから、だよ」
その言葉に胸が少し熱くなる。
手をそっと包み返すと、あかりちゃんは照れたように肩を寄せてきた。
やがて巫女さんに案内され、祈祷の間へ入る。
神主さんの祝詞がゆっくり響き始めると、空気がすっと引き締まり、心にも静けさが広がった。
僕は手を重ねるように、そっとあかりちゃんの背中に触れた。
彼女は微かに振り返り、安心したように目を細める。
祝詞の響きに包まれながら、ふたりでひとつの願いを胸に浮かべる。
——どうか、この小さな命が無事に育ちますように。
——どうか、あかりちゃんが元気で笑って過ごせますように。
——そして、これからの家族の時間が、穏やかで温かいものでありますように。
あかりちゃんは、祈祷の間ずっとお腹を優しく撫でていた。
その姿は、母としての優しさと強さが混じり合っていて、胸の奥がじんわり熱くなるほど美しかった。
■ お守りと、帰り道の会話
祈祷を終えると、お腹用の御守りを授けてもらい、ふたりで受け取った。
小さな布袋に入った御守りを見つめながら、あかりちゃんは笑顔を崩せずにいた。
「これ……ずっと大事にするね」
「うん。赤ちゃんを守ってくれるお守りだね」
「すごいね……本当に家族なんだなぁって思う」
帰り道、境内の階段をゆっくり降りながら、あかりちゃんが言った。
「ねえ……」
「うん?」
「あのね、祈祷のとき……あなたが背中に手を添えてくれたでしょ?」
「うん」
「すごく安心したの。涙が出そうなくらい……“大丈夫だよ”って言われてるみたいだった」
その言葉を聞いて、思わず足を止めた。
あかりちゃんの手を取り、そっと握りしめる。
「これからもずっと一緒にいるよ。ふたりを守るって決めたから」
「……うん。私も、あなたとなら、どんな未来でも大丈夫って思える」
境内の木漏れ日がふたりの影を重ね合わせる。
その重なりは、すでに三人分になりかけていて、見ているだけで胸が熱くなる。
■ 小さな幸福が積もっていく午後
帰りに近くの喫茶店で休憩することにした。
あかりちゃんはカフェインレスのミルクティーを頼み、湯気を眺めながら幸せそうに微笑む。
「今日、来られてよかったね」
「うん。本当に……なんだか、強くなれた気がする」
「強いよ。あかりちゃんは、もうお母さんなんだもん」
「ふふ……まだ実感ないけどね。でも……あなたのこと、もっと信じられるようになったよ」
そう言って手を重ねてくるあかりちゃんの指先は、少しだけ熱を帯びていた。
ふたりの心の距離が、またひとつ縮んだ気がした。
安産祈願の帰り道には、風も空も街の色さえも、どこか優しく見えた。
これから起こるすべてのことに、ひとつひとつ意味があるように思えるほど。

