【恋愛日記㊷】安定期に入り、ふたりで赤ちゃんの名前を考える夜

恋愛日記(あかりちゃん)

安定期に入ったと聞いてからというもの、
僕の胸の奥には、いつも小さな灯りがともっているようだった。
それは安心であり、期待であり、
ふたりで歩いてきた時間がひとつ結実したような喜びだった。

その夜、夕食を終えたあと、
あかりちゃんがふとキッチンの方を見やりながら言った。

「ねぇ……ちょっと、いい?」
「うん?」
「そろそろ……名前、考えたくなってきちゃった」

僕は手にしていたマグカップを置き、
目を瞬かせた。

「名前?」
「うん。まだ早いかもしれないけど……
 なんだか、最近すごく“実感”があってね」

あかりちゃんはお腹にそっと手を当て、
優しい目で微笑んだ。

その仕草を見るたびに、
僕は胸がじんとあたたかくなる。

「いいよ。今日、考えようか」

そう言うと、あかりちゃんの顔は
ほっとしたように、そして嬉しそうにゆるんだ。


ふたりでノートを開く

リビングのテーブルに
小さなノートとペンを持ってくると、
あかりちゃんはワクワクしたように身を乗り出した。

「ねぇ、まずは男の子か女の子か、どっちの名前から考える?」
「どっちからでも。全部書いていこうよ」

「全部……ふふ、それいいね。
 あとで“どれが一番赤ちゃんに似合うかな”って決めるの」

その時のあかりちゃんの表情は、
完全に“お母さん”の顔だった。

僕はその横顔を見るだけで胸が高鳴り、
同時に深く満たされる。

シャイニージェル公式ショップ

音の響きを確かめながら

最初に書いたのは“優しい響きの名前”。
次に“明るいイメージの名前”。
そして“意味を込めた名前”。

「ねぇ、この名前どう?」
あかりちゃんが指で示したのは、
やわらかい光のような名前だった。

「いいね。あかりちゃんが選ぶだけあって、明るいね」
「えへへ……そうかな?」

「これは? あなたっぽい気がするけど」
僕が書いた名前を示すと、
あかりちゃんは少し照れながら言った。

「あなたの選ぶ名前って、なんかね、
 “守ってあげたい”って気持ちを感じるの」

その言葉に思わず笑ってしまった。

「守るよ。もちろん、どんな名前になってもね」

ふたりでひらがなを並べて、音の調子を確かめて、
苗字と合わせて呼んでみたりして。
それだけのことなのに、
まるで小さな未来をひとつずつ触っているような気持ちになった。


名前に込める想い

ひとしきり案が出揃った頃、
あかりちゃんは小さく息を吸って、
自分のお腹をなでながら言った。

「ねぇ……私ね、できれば、
 “この子の人生が明るくなる名前”にしたいな」
「うん、わかる」
「私って……子どもの頃、いろいろ不安なこと多かったから……
 だからね、この子には“安心できる未来”をって、
 そんな願いを込めたくて」

僕はそっと彼女の手を取った。

「大丈夫だよ。
 あかりちゃんと僕の子だから、きっと強くて優しい子になる」
「そんな風に言ってくれると……すごく心が軽くなる」

そして、あかりちゃんは微笑みながら続けた。

「あなたは……どんな願いを込めたい?」

少し考えてから、僕は答えた。

「この子が……
 自分の人生を、自分の歩幅で歩けるように。
 そんな祈りを込めたいかな」

あかりちゃんは嬉しそうに目を細めた。

「やっぱり優しいね、あなたって」
「いや、あかりちゃんが優しいから、そんな気持ちになるんだよ」

その言葉に、彼女は照れくさそうに肩をすくめた。

シャイニージェル公式ショップ

決まらなくても、幸せな時間

気づけばリビングはすっかり夜になり、
窓の外には街灯の柔らかい光が浮かんでいた。

「……まだ決まらないね」
「うん。でも、いいよね。選ぶ時間も楽しい」
「そうだね。だって、赤ちゃんのこと考えながら話すだけで幸せだし」

あかりちゃんはゆっくり背中を伸ばして、
僕の肩に寄りかかった。

「ねぇ……こういう“未来を一緒に決めていく時間”ってさ……
 本当に夫婦になったんだって感じするよね」
「するね。すごく」

彼女の温もりが肩に落ちて、
僕たちは言葉少なに微笑み合った。

赤ちゃんの名前はまだ決まらなかったけれど、
その夜の空気に満ちていたものは確かだった。

“家族になる未来をふたりで描いていく”
その喜びが、静かに、確かに温かく灯っていた。

タイトルとURLをコピーしました